愛しさのすべて

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~隼人~ 部屋を後にした竜の背中は微かに震えているのが分かった。 その肩をそっと抱き寄せて俺達は足早に家を後にした…。 外に出て見れば、忘れかけてい景色が目に止まる。 『そういえば今日って、クリスマスイヴだったんだな…』 『あぁ、そうだな』 あたりを彩る色鮮やかなイルミネーション。 夜にも関わらず町はまだ声が途絶えない。 当たり前のように肩を寄せ合う恋人達。 幸せそうに笑い合う家族。 そんな人波に流されていきそうになる竜を咄嗟に止めて引き寄せた。 『隼人…?』 不思議そうに俺を見つめる竜にほんの少し照れ笑いをしてみせる。 このまま道なりに行けば、俺達の家の着く。 もう用事は済んだ。 後は帰るだけ…。 決して、この雰囲気に感化された訳ではないが…まだ今は…、離れたくないと思った。 『今日さ、クリスマスイヴじゃん?』 『あぁ。そうさっき言っただろ』 『まだ夜は長いよ?』 『…っ。あぁ…そう、だな…』 俺の言いたい意味が分かったのか、少し虫が悪そうな顔をする竜。 『俺、まだ一緒にいたいんだけど?』 『…………………』 『寒いから外にはいたくねぇなぁ…』 『…、はっきり言えよ』 俺が面白がっているのが分かったのか、少しだけ不機嫌そうな顔になる。 いつもならもっと焦らして、竜との会話を楽しむ余裕もあるけれど、今日はいつもと違って平気な顔をしているだけで精一杯ってのが本音なんだよね。 道の途中で立ち止まったままの俺達。 俺はそっぽを向く竜の手を握ると足早に路地裏へと連れ込んだ。
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