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『って、おい。何すんだよ、いきなり』
文句を言う竜なんて無視して路地裏に連れ込み、勢いのままに強く抱きしめた。
抱きしめた瞬間に、驚きで肩が揺れたが暴れる様子もなくただ俺にされるがままに抱きしめられていた。
『今日は余裕ねぇから、もう言っていい…?』
『隼人、ちょっ…』
何かを悟ったのか、また腕の中で暴れそうになる竜を力づくで抱きしめて耳元でそっと囁いた。
自分の声が情けないくらいに掠れていて少し自嘲気味に笑ってしまった。
『抱きたい…、竜を。今すぐに…この腕で抱きたいんだ……』
順序間違ってんだろとか、もっと他に考える事あんだろとか言われる覚悟は出来ている。
心の準備もまともにまだしていない竜にこんな事を言ってしまう俺もどうかと思うが…、
この浮ついた気持ちをどこかに留めておくことも出来ないんだ…。
もう誰にも邪魔させない。
やっとまたこの腕の中に竜がいる。
いるだけじゃ不安なんだ。
傍にいるだけじゃ怖いんだ。
幸せをまだ実感できていないんだ。
好きだよ、竜がもの凄く。
だから………
泣かないでよ。
俺の服を微かに濡らすその涙は一体、誰に対する涙ですか…?
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