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~竜~
抱きしめてくれる腕が暖かい。
それと共に伝わってくる鼓動がいつもより早いことに気付く。
あぁ…
俺はこんなにこいつを待たせてたんだな………
そう思ったらいろんな出来事が頭の中を走馬灯のように流れていって知らない間に目から涙が流れていた。
隼人の服を濡らすと分かっていながらもこの温もりからもう離れたくなくて、震える手をゆっくりと隼人の背中に回した。
回した腕でこいつの背中がこんなにも広かったんだなと、知らない間に流れていた時間がこんなにも俺達を成長させていたんだと知った。
『はや、と………』
耳元で掠れた声で゙何…?゙と言われて知らずに身体が少し反応してしまう。
背中に回した腕に力を込めて、この今にも溢れ出しそうな想いをやっと伝える事が出来るんだと思うと、また涙が止まらなかった。
ゆっくりと見上げた先には、いつの間にか少し大人びた俺の幼なじみの顔。
成長した身体は同じように時を刻んだはずなのに、俺の方が何故か一回り小さくて…
嫉妬した時期もあった。
力では敵わない男としての悔しさを味わった時期もあった。
けれど、いつからかその逞しい腕の中で眠る事が一番の安心だった。
守られていると実感出来る喜びを教えてもらったこの背中に…
『隼人っ、はや、とっ!!』
見上げた先の顔は涙で霞んでよく見えないはずなのに、何故かあいつが困ったように笑った気がした。
『なぁ、竜。それは幸せの涙だって受け取っていいのかな…?』
いつも強気なはずなのに、何故か俺の前では弱気な奴で。
隣でいつもヘラヘラ笑っていたはずなのに、いつからこんなにも大人びた笑顔を見せるようになったんだろう…。
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