802人が本棚に入れています
本棚に追加
~竜~
『なぁ、母さん。なんで親父は急に俺の事を連れて行こうなんて言い出した訳?』
隼人との約束を断り、親父に言われた通り、今度着て行くであろう服を選びに来た俺。
『聞かない方がいいわ。でも、きっとあなたも喜ぶはずだから』
そう言い、少し微笑むと母さんはまた店員と俺に似合う服を探し始めた。
俺が喜ぶ…、?
そんな事あるわけなくね、?
と思ってはみたものの、久しぶりにみた母さんの楽しそうに笑う笑顔を嘘だとは思えなかった。
そういえば、こうやって二人で買い物に来るなんていつぶりだろうか…
そう思い、店員とこれはどうか、あれはどうかと真剣に考えている母さん。
正直、親父とぎくしゃくしてから母さんとも自然と話さなくなったし、ましてや出掛けるなんて考えた事もなかった。
母さんが楽しそうなら…
そう思い俺は、この人の笑顔のためにも今回くらいは親父に従おうと思った。
もしこの時、俺がここにいなかったらあなたと出会う事なんてなかったのに…
気付く頃には、もう遅かったんだ…
最初のコメントを投稿しよう!