26回目のバースデー

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霧谷雅哉は、いつもの駅に向かって、早歩きで進んだ。 あいにくの雨で、スーツのズボンの裾は、濡れて色が変わっていた。 「はぁ、はぁ・・なんとか間に合った。雨だとギリギリやな」 霧谷は、いつものホームの場所で電車が来るのを待っていた。 毎日みる学生、サラリーマン、OL・・普段と何も変わらない1日が始まろうとしていた。 「ピンポンパンポーン」 「ん?」 「お客様にご連絡いたします。一つ前の駅で人身事故が発生したため、ただいまから電車の運行を見合わせます。お急ぎのところ誠に申し訳ありませんが、運転再開までしばしお待ちください」 霧谷は、「マジかよ。今日は朝から大事な会議なんやけどな・・どうしようかな・・」 「あ、まずい!」 霧谷は、急にホームの階段を駆け上がり、改札を出ようとした。 しかし、時すでに遅し、改札の周りは人でごったがえしていた。 お客と駅員の罵声が響いていた。 霧谷は、「遅かったか、これじゃタクシー乗り場も無理やな」と、諦めてホームに戻ろうとしたその時、 『~今日は、2010年4月2日です~』 改札の横にあった液晶画面が目に入った。 霧谷は、「なんや、今日は誕生日か・・誕生日やのにこれってほんまついてないな」と、一気にやる気を失った。 「今日は、仕事行くの辞めようかな」 霧谷は、人ごみを掻き分けて改札を出た。そして、駅の横にあるカフェに入った。 霧谷は、通りが見える窓側の席に座り、コーヒーとクロワッサンを頼んだ。 窓から見えるタクシー乗り場には、長い行列が出来ていた。
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