1人が本棚に入れています
本棚に追加
霧谷雅哉は、いつもの駅に向かって、早歩きで進んだ。
あいにくの雨で、スーツのズボンの裾は、濡れて色が変わっていた。
「はぁ、はぁ・・なんとか間に合った。雨だとギリギリやな」
霧谷は、いつものホームの場所で電車が来るのを待っていた。
毎日みる学生、サラリーマン、OL・・普段と何も変わらない1日が始まろうとしていた。
「ピンポンパンポーン」
「ん?」
「お客様にご連絡いたします。一つ前の駅で人身事故が発生したため、ただいまから電車の運行を見合わせます。お急ぎのところ誠に申し訳ありませんが、運転再開までしばしお待ちください」
霧谷は、「マジかよ。今日は朝から大事な会議なんやけどな・・どうしようかな・・」
「あ、まずい!」
霧谷は、急にホームの階段を駆け上がり、改札を出ようとした。
しかし、時すでに遅し、改札の周りは人でごったがえしていた。
お客と駅員の罵声が響いていた。
霧谷は、「遅かったか、これじゃタクシー乗り場も無理やな」と、諦めてホームに戻ろうとしたその時、
『~今日は、2010年4月2日です~』
改札の横にあった液晶画面が目に入った。
霧谷は、「なんや、今日は誕生日か・・誕生日やのにこれってほんまついてないな」と、一気にやる気を失った。
「今日は、仕事行くの辞めようかな」
霧谷は、人ごみを掻き分けて改札を出た。そして、駅の横にあるカフェに入った。
霧谷は、通りが見える窓側の席に座り、コーヒーとクロワッサンを頼んだ。
窓から見えるタクシー乗り場には、長い行列が出来ていた。
最初のコメントを投稿しよう!