26回目のバースデー

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霧谷は、まだ窓の外を眺めていた。 ふとタクシー乗り場の一人の女性が目に入った。 電話をしていた女性は、タクシーに乗るのを諦めたのか、こちらのカフェに向かってゆっくり歩いてきた。 霧谷は、「背は小さいけどスタイルはいいな」と呟いた。 ふと、先程の電話で遮られた、6年前を思い出していた・・・ 6年前の霧谷は、学生といいながら学校も行かず、欲望のままに生きていた。 霧谷は、いわゆるスカウトといわれる、夜のお店の派遣会社を経営していた。 会社と言っても、正式に登記しているものではなく、雑居ビルの一室を事務所にしていて、毎日、男女が出入りをしていただけだった。もちろん税金なんか払ってはなく、いつ捕まってもおかしくない状態だった。 しかも、ほとんどが学生で二十歳になっていないものまでいた。 霧谷は、乗りに乗っていた。 毎日すごい額のお金が入ってくる。みんなに給料払っても使いきれないお金が残った。しかも、すべてが現金で毎日入ってくる。これが夜のすごいところである。すべてニコニコ現金払いである。 「霧谷社長!そろそろ時間です。行きますか?」と、一人の若いホスト風の男は尋ねた。 「あぁ、わかった。じゃ、あとの事は頼んだ、龍介」 「わかりました、社長!あ、社長・・お誕生日おめでとうございます。遅くなりました・・」 「おせぇーよ、ばーかっ。・・でも、ありがと。じゃまた明後日な」 霧谷は、少し照れながら、黒のジャケットをはおり、窓ガラスに移った自分の髪型を整え、さっそうと事務所を出た。 霧谷は、慣れた感じで手を上げタクシーに乗った。 「さくらクラブまで」 「・・・」 運転手は、無言で車を走らせた。 3分も経たずに目的地についた。 「一万しかないわ。あと、とっといてな」と霧谷は吐き捨てるよに言った。 「あ、ありがとうございます」運転手は、慌てておじぎをした。 霧谷は、「世の中金か・・」と小さく呟いた。
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