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紫のローブを羽織った人物が向かった酒場の奥には、受付があった
その人物は受付に居る女性に声を掛けようとするが、その女性は驚きからかローブの人物を凝視して固まっている様だ
しばらくの間思わぬ形ではあったが、受付の女性とローブの人物は見つめ合う
見つめ合うと言っても、女性はローブの人物に驚いており見ているというよりは呆けていると言った方が正しいだろうし、ローブの人物に到っては受付の女性が普通になるのを待っているだけなのだが…
しかし一向に事態が変わらない
酒場に居る全ての人達も二人がこれからどうなるのかとソワソワしながら見ている
「………ギルドマスターに呼ばれたんだが」
ここにきて初めて、ローブの人物が声を発した
恐らく、女性が元に戻るまで待てなかったのだろう
このローブの人物、声からすると男だという事が判る
しかし何処か幼さが感じられる少年の声であった
「!?あっ、はははい、お話は伺っております。
『銀翼の融合者』様。」
かなり慌てた様子で女性は返事をしたものの、受付という仕事は忘れていなかったようだ
何処からか取り出したカードを紫のローブを羽織った人物『銀翼の融合者』に渡す
「ありがとう」
フードと仮面のせいで表情は判らないが、微笑みながら優しい声で感謝の言葉を口にした様に感じられる
「い、いいえ」
どうやら受付の女性は、その素直な言葉に照れているかの様に少し顔を赤らめながら首を横に振る
「お仕事、頑張ってね」
『銀翼の融合者』は受付の女性にだけ聞こえるように呟いて、受付の横にある階段を登る
「……カッコイィ」
受付の女性は独り言のつもりで呟いたが、静まり返っている酒場では結構大きく聞こえており、受付の女性に憧れていた数人はかなりショックを受け、まだ昼間だというのにやけ酒を煽る羽目になってしまう
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