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「……898、899、900!ラスト100!」
日が登り始めたばかりのまだ静けさが残る公園に額から汗を流し、素振りに勤しむ袴姿の少年が1人。
思わず見とれてしまうぐらい彼の動作は洗練され、竹刀を振り上げ、振り下ろす簡単な動作だが一切の無駄がなく、ただ綺麗だった。
少年の名前は八雲九十九(ヤクモ ツクモ)線の細い体つきからは、想像もつかないが全国剣道大会3連覇の偉業を、昨日達成した強者である。
「……998、999、1000!!」
「ふぅ、今日はこれぐらいにしとくか」
軽くタオルで汗を拭ってから慣れた手つきで竹刀を麻袋にしまい、公園を出ようとする。
朝日はすっかり登っていた。
「朝から精が出るねぇ」
後ろから声を掛けられ振り向く。
普段から見慣れた顔がそこにはあった。
「なんだ舞か」
残念そうな少年の顔に女性は口を尖らせ、不満げな表情を浮かべる。
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