31人が本棚に入れています
本棚に追加
「あぁ~。ちょい待ち。これこれ」
そう言って、慌ててコンビニのビニール袋を差し出す。
「朝飯ならこれから家で済ますから間に合っているぞ」
顔だけ振り向き、受け取る素振りすら見せず歩き続ける。
「誰があんたにって言ったのよ。ムサシの漫画。今日は月曜日でしょ?」
ここで初めて足を止めて振り向いた。
ツクモの顔には寂しさが漂い、その表情はどこか頼りない。
「良く覚えてたな」
「当たり前でしょ。あんた達とは幼稚園入る前からの親戚みたいな付き合いなんだから」
「で、一体これはどういう風の吹き回しだ?」
「大会の優勝祝いよ。たまには人に用意されるのも悪くないでしょ?」
「優勝祝いが漫画一冊?それも俺の為じゃないとはお前らしいな。確かに悪くない。ありがとう」
ツクモは素直に礼を言い再び歩き始める。
遠くを見つめ、自分の胸に思いを詰めて。
「今夜の優勝祝賀会あたしも行くんだからあんたもしっかり参加しなさいよ~」
舞の言葉に振り向かず、何も持たない左手を振ってそれに応えて、ツクモは家路についた。
最初のコメントを投稿しよう!