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「母さんか。ムサシの部屋に何か用ですか?」
少し視線を上げ、母の顔を見上げるがその目つきは睨みつけるごとく鋭い。
「あなたはいつまで居なくなった人の部屋に出入りするつもりですか?」
「母さんには関係ないでしょう」
ツクモの表情は更に曇る。それに伴い母の優しい顔も段々と強張り、普段は優しい声を荒げる。
「あなたは過去に縛られてる、弟の思い出に捕らわれてわざわざ毎週あの子が好きだった週刊誌まで買い込んで来て。もう3年ですよ?そろそろ諦めたら如何?」
優しい顔とは裏腹に、何とも母親らしからぬ台詞を、息子に突きつける。
「母さんには分からないんですか?ムサシは望んで居なくなった訳ではありません。必ずここに帰って来るんです!!」
そう言い捨て、反抗期の子供のように部屋を飛び出して行く。
「はぁ~。なかなか上手くは行かないものですね」
部屋に残された母親は、1人呟く。
その顔には、先程の厳しさはなく、悲しさと息子を思う気持ちで、溢れていた。
自分の部屋に帰ると、着替えを済ませ足早にベッドへと倒れ込む。
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