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しばらく黙って並んで歩いていると凛斗が笑った。
「なんだよ?」
不機嫌に夏貴が聞く。
「二階堂先生と夏貴がなんで仲良いのかなって思ってさ。」
「………たぶんさ、根っこが似てんだよな。」
「なんか分かるかもね。」
芯が強くて、自分を持ってて、決して周りに流されない強さがある。
凛斗は似てるな。と思っていた。
「なぁ、夏貴。
俺はさ、ピアスとかブレスとかカッコいいし別にいいと思う。
夏貴が憧れとか好きな物とか貫く姿好きだよ。」
凛斗は前をただ向いて話してた。
「社会に出てる為にマナー身につけるって先生は言うけど
社会に出るって事が自己を殺す事であきらめる事なら
俺はさ、大人になんかなりたくないし
そうなった夏貴なんか見たくない。」
だから、お前はそのままでいいんだよ。
って凛斗は夏貴を向いて笑った。
夏貴は凛斗をじっと見た。その瞳が変わった時には凛斗は視線を外していた。
昇降口まで来た2人は下駄箱の前で靴を履き変えた。
凛斗が靴を取り出して下履きを床に落とすとまだ下駄箱の前に立ってた夏貴がいた。
「夏貴?」
「………凛斗は俺とは真逆だから良い。」
「は?」
「真逆だけど似てるから良い。」
「なんだよ。それ。」
凛斗は靴を履き変えて立ち上がると爪先を2回鳴らした。
「自分の意思で俺を支えてくれるから。俺が間違ったら正してくれるから。」
「は?」
凛斗は夏貴が何を伝えたいのか分からなかった。
夏貴も漸く靴を履き変えて出て来た。
外に出ると空は紅から深い藍色に色を変えはじめていた。
「ふぁ…」
凛斗はゆっくり背伸びをして歩き出した。
同じタイミングで夏貴は荷物を肩にかけ直して歩き出す。
同じ歩幅で
同じ距離で
同じ道を
同じ物を見ながら
でも思いは違う。
「だから、お前がいい。」
「ん?」
「お前となら出来る気がする。」
夏貴は決意をした。
風感じて、空を見て、校舎を見て、凛斗を見て
歩き始める。
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