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時は江戸時代。
わたしの名は 九十九暁(イチナシアキラ)と申します。
わたしの家は、この江戸の町の外れにある九十九神社。
おやじ様が神主をつとめる 遠く昔へ遡れば 由緒正しきと出雲の…
まぁ 只 ただ古い神社の跡取り息子でございます。
さて 最近の九十九神社の困り事はこれです。
暁は目の前に積まれた櫛や鏡 扇子や箪笥まで これには暁も深い溜め息をはくしかありません。
九十九…つくも…付喪 安易すぎませんか。
その前に 『いちなし』ですからね。
百にはひとつ足りないから『いちなし』
どう考えても 付喪神には不向きな処だと思うんですがね。
だって そうでしょ。付喪神は物が百年の時をへて 妖しの力を得るというじゃないですか。
ひとつ足りないんですからね。
暁は苦笑をうかべています。
でも どうみても只のガラクタ。百年の時を大切に扱われていたとは、到底思えない品ばかり。
これじゃ ごみ捨て場だよ。
「おや?あの手鏡は見事な細工だね。そうは思わないかい?月闇(ツキヨミ)。」
『成りかけだよ。力はあるが まだ時じゃあない。』「次の満月には 会えるかなぁ。」
ニコニコと 手鏡に見入っている暁の横には 月闇が大きな欠伸をひとつし、丸くなっていました。
暁は艶やかな 黒い毛並みを撫で 月闇との出会いを思い出していました。
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