無の魔法使い

プロローグ

外は雨の奏でる音がだんだんと強さを増し、時折その合間が雷の鳴る音も近づいてきていた。

外は真っ暗で町の中は、家々の光と街頭で微かに明かりを帯びている。

その風景を部屋の窓から眺めている1人の男がいた。

髪は少し長めの赤髪で片目には長い切り傷があり、その瞳は堅く閉ざされている。
身長は190cmくらいで顔には少ないながらも皺が刻まれ、30歳後半という印象を受ける。
重そうな青色の鎧に青いマントが赤い髪を際立てていた。

コンコン

とても控え目な音で叩かれたドアの向こうに見知った気配を感じ、その男は窓とは逆のドアの方に体を向けた。
傷のついた目は開かずにもう一方の目を開け、その目からは青色の瞳と鋭い眼光が放たれている。

「入っていいぞ」

その重低音のような声が部屋に反響しなくなった時、その扉が開かれた。