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何もかもが、きっといい方向へと向かって行ってる。
タカヒロさんと付き合いだして、そう思った。
「ちょっと出てくるから」
「はぁい」
今日のシフトは、大学生の男の子と二人。店長も会議があるとのことで、出て行った。
お客さんも少ない平日の午前中。
「天音さん、俺ちょっとウォークイン入ってきます」
「わかった~」
後輩が、ジュースの冷蔵庫へと消えていく。
今日は、平和だなぁと、外をぼんやりと見た。
外はいい天気だ。
ちょっと風は冷たいが、仕事するのが勿体ない、青い空。
次のデートは、ドライブがいいな。
こんな天気のいい日にタカヒロさんとドライブ。
どこがいいかな?
自然もいいけど、ありきたりな観光地もいいな。
どこに行っても、タカヒロさんは目立つのだ。
その隣に立つのは……、すごくすごく優越感がある。
近い未来を考えて、思わずあいの顔がにやける。
「おい、アンタ」
その妄想をぶち破ったのは、親父の乱暴な声。
はっとして、声のした方を見る。
レジに近い所に、声の主はいた。
汚れた作業着に、ぼさぼさの髪。
顔は黒いが、頬や目元がうっすら赤い。目は血走って充血している。
……酔っ払いだ。
あいは、こくんと喉を鳴らした。
コンビニにくる厄介な客のワースト3に入る、対処に困る上、強く追い出すことも難しい。
平和だと、思ったのに……。
「酒は、どこにあるんだ?」
まだ飲むつもりなのか、酔っ払いは、酒臭い息で聞いてきた。
「……こっちです」
関わらないのが一番だと、本能が言っていた。
お酒の棚に案内する。早く買って、でていってくれたらいい。
しかし。
「ないぞ!」
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