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強い声が飛んでくる。
「え?。お酒はそこに……」
まるで駄々っ子のように酔っ払いが言う。
「俺の好きな酒がないっ。どういう事だ?」
怒声に、店内で立ち読みしていたお客が振り返る。
「……あの、置いてないのは、仕入れてないんで」
お酒の発注は、店長がやってるので、詳しい事はわからない。
「なんで仕入れないんだ?。人気なんだぞ?。他の店にはいつも置いてある。なんでだかわかるかっ!」
酔っ払いはますます声を大きくした。
「はぁ」
「俺が入れておけって言うからだ。俺の言う銘柄を入れれば間違いないんだ!」
どちら様だ……。
客のモンスター化に呆れる。
「残念ですが、ないんです」
はっきりとした声で言う。
一瞬、酔っ払いは怯んだ……気がした。
早く追い払いたい。
強い気持ちで、酔っ払いを睨みつけた。
「あぁ?」
次の時、酔っ払いの気配が変わった。
「生意気なガキが」
目が血走って、噛み潰すように唸る。
やばい、やばいと心が警報を鳴らす。
逃げた方がいいとはわかっても、逃げられない。
誰か…。
助けを求めて、他の店員を呼ぶボタンを押した。
だけど。
すぐに来るはずの、バイト君は現れない。
「もう一回言ってみろ!こらぁ!」
呂律が回らないながらも、迫力で凄まれて、びくりとする。
カウンター越しでも至近距離の目線が合わせられない。
なんで、来ないの?
もう一度、ボタンを押しても助けは現れない。
「聞こえなかったのか?。もう一回言ってみろと言ったんだ」
怖い……、脅されて体がすくむ。
でも、誰も助けてくれない。
誰も……。
信じられないことに、酔っ払いはあいの制服を引っ張る。
殴られる……!?
まさかの予測に、恐怖心が身構えさせる。
「………っ!」
その時がくるのを黙って待っていたが、耳に入ったのは、違う音。
「いい大人が、みっともない」
ため息混じりの声。
しっかりと掴まれていた制服が離されて、ふらりと後ろに下がる。
そこで初めて、顔を上げれた。
「なんだお前?」
酔っ払いが今度はそっちに挑みかかっていく。
「あなたがやっていることは、十分営業妨害です。警察に突き出されても、文句は言えませんね」
冷たい瞳がまっすぐに酔っ払いを見据えている。
体格も体力も、あきらかに上な相手に見下ろされ酔っ払いは少し、戸惑って見えた。
「何なら、今、警察呼びますが?。防犯カメラを
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