好きが欲しい

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「うん、ごめんね」 平気……と葵は笑う。 彼氏としっかり繋がっている葵が羨ましい。 「また、捜さなきゃ」 ため息をついて、呟く。 たった一人、自分だけを見てくれる人。 「あい、こっち~」 待ち合わせの時間に大分遅刻して、焦って走る。 突然呼ばれた、合コン。 可愛い格好をしてはみたけど、走ったせいか髪が乱れてる。 「ごめんね」 「本当だよ。あと5分遅かったら、欠席にする所だったよ」 そういう、友達の顔、いつもより化粧が濃い。 それに……。 「あ!」 同じだ。 「あいも……同じ」 友達もちょっと眉を潜めた。 「同じの、見た?」 そう、コーデは違うけど、二人とも同じベビーピンクの、キャミワンピ。 雑誌の最新号で特集されている、いわゆる『男ウケNo.1ワンピ』だ。 トップスが違うだけだから、すぐに同じだとばれるだろう。 「私、上着脱がないから」 レザーのジャケットを握って、友達が言う。 「それより、もう相手来てるし」 促されて、オシャレなバーに入る。 今日は随分と、上品な場所だ。 居酒屋とか、カラオケとか、庶民的な所が多いのに。 「そいえば、今日の相手って?」 急に頭数揃えの為に呼ばれたが、詳しく聞いてなかった。「ミサト、あい、遅い」 合コン仲間のミキに、膨れられる。 そういえば、遅刻しているのは自分だけではない。 「ミサト……遅刻だったの?」 先程から、いかにも待ってました的な友を見た。 「……鉄則でしょ?。少し遅れてくるって」 小声で、ミサトがそう言う。 「あっそ……」 呆れた声で返事する。 ミキのふわりと揺れるスカートに促されて、大人な雰囲気を歩く。 どちらかと言うと、育ちのいいミキにはこんな雰囲気のバーも似合う。 だけど、あいにはまだまだ堅苦しく感じてしまう。 「ミキ」 「なぁに?」 「今日の相手って?」 ミキの瞳が猫のように光った……気がした。 「ふふふ、今日来れてラッキーよ、あい」 獲物を狙う目だ……これは、そうとういいツテであろう。 「なんと、今日は一流商社マンを集めてみました~!」 「おぉ~」 ミサトも賛同して、二人きゃっきゃっと喜んでいる。 「……サラリーマン??」 あいは、よくわからない。 「違うって、世界を飛び回るエリートだよ。幼なじみのお兄ちゃんのツテで、よりすぐり、経済力と顔力を備え持つ方々をご用意」 ミキは楽しそうだ。 「顔力……」 思わず、どきどきした。 期待に、胸が高鳴る。
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