最悪なお客サマ

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最悪なお客サマ

「いらっしゃいませ~」 いつもの仕事場、やることに変わりはないのに、今日は気力が溢れてる。 無駄に、笑顔だって振り撒ける。 「今日は、張り切ってんね」 お客が途切れたのを見計らって、葵が話かけてくる。 「うん」 「いいこと、あったの?」 にやりと葵が笑う。 「へへへ~。新しい出会い、頂きました」 「へえ? どんな人?」 そこで、とりあえずうろ覚えのタカヒロさんの肩書を言ってみる。 「商社マン。葵、わかる?」 「へぇ」 少し驚いたように、葵が頷く。 「将来有望じゃん。で、顔は?」 言われてタカヒロさんの優しい瞳を思い出す。 「えへへへ~」 思わずにやけてしまう。 「ちょっ…、それ恋する乙女の顔じゃないから」 葵から突っ込みが入る。 「その人、あいに優しい?」 「え?」 葵は、真面目な顔だった。 思えば恋愛事の相談は、いつも葵にしていたから、どんな人と付き合ってきたのかを彼女はよく知っている。 「優しいよ」 「いつ出会ったの?」 「先週」 へへっと今でも顔が緩む。 あの合コンから、毎日メールしてる。 電話もかかってくるし、会社帰りに遊びに行くこともある。 「彼女なの?」 葵が、聞いてくる。 それは、最近のあいの疑問だった。 「う~……ん」 それは、はっきりしない。 確かに、彼女と言われてもいいような、関係だと思う。 今までに、付き合ってきた人達は、付き合おうと言ってくれた。 だけど、タカヒロさんは……。 「好きって言ってくれるから、多分」 今までは、付き合いだすと、好きと言う言葉は減った。その代わり『俺の』とか所有の言葉が増えた。 「好き……だけかぁ」 葵がちょっと心配そうな顔をする。 「あ、いやでもまだ始まったばっかりだし、……これからだと思うしっ」 なぜだか、焦って庇ってしまう。 だってまだ一週間だから、これから、タカヒロさんがはっきり意思表示してくれるかもしれない。 それに……。 今日も、夕方から会うし……。 「おい」 これからを想像して思わずにやけた時、冷たい声が降ってきた。 「おい」 気がつけば、レジカウンターにスーツの男の人が立っていた。 「いつまで待たせる気なんだ?」 やばい。 いつの間にか、お客さんがいたらしい。 気がつかずに、ぼうっとしていたらしい。 葵は、商品を補充しに、バックルームに消えていた。 「すみませんっ」 慌てて、バーコード
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