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「485円です」
「勤務中は、きちんと気をつけていた方がいい」
余計な一言が降りてくる。
「は?」
その冷たい声に振り仰ぐ。
…うわ……。
見上げた長身、その整った顔と、凍りつきそうな瞳の強さに怯む。
知的な印象を強く感じるのは、ふちなしの眼鏡のせいだろうか。
「すいませんでした」
とても謝罪には聞こえないだろう、怒りを含んだ声。
「人の忠告もまともに聞けないようでは、苦労するぞ。君」
ふうっとため息をつかれ、ますます頭にくる。
「余計な…お世…!」
「どうしましたかっ?」
不穏な空気を嗅ぎ付けたのか、奥の事務所から店長が慌てて出てくる。
「何か、失礼な事でも?」
「彼女の勤務態度に……少し、ね」
冷たい瞳が、まっすぐにあいを見つめる。
「申し訳ありません。きちんと教育しますので…」
がしっと、腕を店長に掴まれる。
「申し訳ありませんでした」
ぐいっと乱暴な手が髪をぐしゃと乱し、頭を無理矢理下げさせられる。
最悪だ。あいつ、最悪な客だ。
しかも、ちょっと八つ当たりじゃない?
「天音!」
そいつが出ていくと同時に、店長の怒声が響いた……。
夜のお出かけは、わくわくする。肌寒くなった気温のせいか、出歩くのが嫌になるけど……、イルミネーションが街をロマンチックにするから。
本当は嫌な、待ち合わせもこの時期だけは、少しは楽しい。
「こんばんは」
タカヒロさんがゆっくり近づいてくる。
「あ……こんばんは」
デートの相手に、こんな挨拶したことない。
だけど、タカヒロさんとのデートはいつもこの挨拶からだ。
「少し、待たせちゃったね?」
ふわりと、タカヒロさんが頬に触れてくる。
「そんな、ちょっとだし」
「冷たくなってる」
両手で頬を包まれる。タカヒロさんの手は暖かい。
「風邪引くといけないから」
ぎゅっと手を握られ、車へと連れて行かれる。
「どこ行こうか?」
タカヒロさんは、優しく聞いてくる。
「あいちゃん、イルミ好きって言ってたから、見て回る?。オススメのが……」
きっと、事前に調べてくれたんだろう。
それが、嬉しい。
タカヒロさんが車を発進させる。
街の明かりが窓に流れていく。
「今日、何してたの?」
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