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「なぁ?明日も休みだけど、逢える?」
後部座席からそっと抱き上げた響は、未だ私の耳元で深い寝息を立てている。
「ごめんなさい、明日はちょっと…」
「ふぅん、そっかぁ~、寂しいけど仕方ないな。じゃあ美優、今夜はゆっくり休めよ?おやすみ」
「うん、ありがとう。一樹も気を付けて帰ってね。おやすみなさい」
彼の愛車を見送ると、私は響と二人きりで暮らす、けして新しくない自宅の小さなマンションへと足を運ぶ。
こじんまりとしたリビングの明かりを灯すと、いつもの風景が目の前に広がった。
響のお気に入りの絵本が沢山収納された本棚の上には、バーバリーの黒いクマのぬいぐるみ。
その隣には、小さなフォトフレームが立て掛けられている。
まだ幼い響に言っても、理解出来る訳も無いが、時折寂しそうに他人の家族を見つめる息子に、私はフォトフレームの中で微笑む彼がパパなのだと教えた。
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