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その途中で突然、天啓を受けたように大切なことを思い出した。
「そうだ・・・・・・母さん、父さんが帰ってくるよ」
彼女は信じられないものを見たかのように、目をまん丸くして自分の息子を凝視する。
僕もそれに負けないように母親をしっかりと見つめた。
「カムパネルラのお父さんが言っていたんだ。一昨日、手紙が着たんだって。もうすぐ・・・・・・帰ってくるよ。だから母さん、早く元気になろう?いつまでもそんな姿じゃ、父さんに笑われるよ」
永遠のような、ほんの一瞬のような。
そんな無言が流れた。
そして2つの目が潤みながら、僕を抱きしめた。
「そうね、いつまでもこんな状態でいるわけにはいかないわ。ダメなお母さん・・・・・・『病は気から』というけど、本当ね 」
「だからそれがいけないんだってば。もっと前向きに考えなきゃ!」
「あらあら。そうね……よしっ、母さん頑張るわよ!」
そう言っていつもより明るく笑う母さんを見て、僕は笑った。
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