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その夜。
昨日と同じ宿屋いるロゼはまた夜の外を眺めていた。
昼間降っていた雨は、あの古びた建物から出た時には止んでいて、空は晴れ月が輝き月明かりを灯す。
今は街の通りには多くの人が出歩いている。
コンコンと叩く音がし扉が開く。
そこから空気の流れと共にいつもとは違う香りが部屋を満たす。
『ロゼさん、お疲れ様でした。』
『本当だよ全く。って、この香りはいつもとは違うやつ?』
手渡されたカップの中身はちょっと濃い茶色のハーブティー。
マキナが二人にお詫びとして饅頭と一緒に買った物。
『あの時買ったやつか。』
『えぇ。とても美味しいです、でも饅頭には合いませんけどね。』
そう聞いたロゼはゆっくりと一口飲む。
普通の紅茶にしてはクセが強い。
フルーツティーと比べるとランクは劣るが不味くはない。
一口二口とふくみながら、一息。
そのまま月を見上げると、自然に笑みがこぼれた。
『意外に美味いな。けどコレ、マジで饅頭とは合わねぇよマキナ。』
とうの本人は疲れ切ったのか既にベッドで横になっている。
物静かな部屋の中に聞こえる寝息。
外からは逆に露店で賑わう人の声、昼間の雨で出来た水溜りに反射する月明かり。
この時代、生きてればこんな事もあるかと思いながら、部屋の二人は紅茶を飲み、それに合わない饅頭を頬張っていた。
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