Episode 2

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『本当に怖かったんだろうな……さて、後片付け後片付け。』 二人の後ろ姿を見送ったロゼは、呟く様に言い振り返り、「ボコボコになったタグラ」を見下ろす。 『恐いかい?』 そう言ったロゼの声はさっきとは違い低く、見下ろすその目は赤く光り、「最期の時を迎えた人間」を見届ける哀れみの目」をしていた。 言い知れぬ恐怖を感じたタグラは半泣き状態で何度も頷く。 『正直に答えろ。アンタ、昨日この森で商人を殺して焼き払っただろ?』 『ゆ、ゆぐじで。ゆぐじで……。』 タグラは顔が腫れ、口の中を切っている為、変な言葉になってしまっている。 『それは、質問に対しての答えじゃないよ。』 ロゼはゆっくりとタグラに歩みより、目の前で立ち止まる。 『その恐さを持ったまま、アンタに殺された人達はどれくらいる? だけどアンタは自ら進んで罪を犯してるのに関わらず、立場が危うくなったら罪から逃れようとしている……。 けどね、誰であろうと、どんなに懺悔しようと、例え相手が許してくれても、一度犯した罪は二度と消えないのさ。』 タグラは気付いた。 目の前に立っている赤髪の男のその眼、その身体から徐々に発せられている気配が「人間ではない」と。 動く事は疎か、声すら出せないタグラは置物の様に固まっていた。
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