輪の外側

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  次の日は雨だった。 夏の雨特有の粘ついた空気が不快で、誰に伝えるでもなく俺は顔をしかめる。 母親の姿はない。 おそらくまだ寝ているのだから、そっとしておいてやろうと思う。 最後にまともな会話をしたのはいつだったっけ。 こんなスレた関係の親子でいるくらいなら、仕事なんて増やしてくれなくていいのに。 だけどそれが母の厚意を無碍にする言葉だと分かっているから黙っていいなりになっていた。 母はそれこそが望む幸せだと信じ切っている。 本心から応えようと思っている訳じゃなくてただ惰性のままにレールを走る『ふり』をする俺はきっと親不孝。 十数日ぶりに足を踏み入れた教室は、相変わらず騒がしい。 ドラマの話で盛り上がる女子、昨日発売された週刊発行の漫画の話題に花を咲かす男子。 俺はそれらのどことも関わりと持たなかった。 クラスメイトはみな、俺を横目でちらりと見るが、見るだけ。 決してそれ以上踏み込んでは来ないし、俺も近寄らない。 同じ空間にいたって、俺の存在はドラマや漫画の登場人物よりも遠かった。 空っぽだった机の中にめちゃくちゃな向きで突っ込まれたプリントの類が、俺の居なかった空白の時間を物語る。 その中身を確認することもせず、一枚ずつ丁寧に折っていき鞄の中のファイルにしまいこんだ。 どうせほとんど教師の作ったプリントだ。 見る必要なんて微塵もない。 本当に必要なものは、あとで家で確認したらいい。 とにかく、教室の中で彼らと同じ何らかの行動を起こす事が嫌でたまらなかった。  
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