輪の外側

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  授業は退屈だった。 どうやら俺はかなり授業の内容を先取りするところまで進めてしまっていたらしい。 授業が進むペースは把握できているつもりだったのにな。 ノートをとるふりをして、俺は意味もない言葉をただただ書き連ねた。 頭に思い浮かんだ言葉を、『とりあえず』形にしていく。 気味が悪い行動だと、自分でも分かっていた。 それでもそのくらいしなければ、自分の中の確かなものが何一つないようで不安な気持ちになるから。 退屈、三時間目、チョーク、雨、時間、制服、数学、罫線、シャーペン、公式、携帯電話、喧騒、―― ――空。 無意識に書いたそれに、シャーペンの先がぴたりと止まった。 個性の無い冷たい俺の字がひたすらに並ぶノートの中で、それだけが異質な力を持って俺に迫ってくるような錯覚。 ふいに窓の外に視線を逸らして逃げる。 叩きつけるように降る雨の向こう側は白く煙ってよく見えない。 ただ、昨日広がっていたあの青い空よりももっと重く近く、のしかかってくるようにすら感じられた。 どっちにしろ、気持ちが悪い。 地球上に居る限りどこへ行っても逃げる事のできない空が怖くて気持ち悪くて仕方ない。 それから解放されるにはやはり死以外あり得ないんだろうか、だなんて。 やっぱり駄目だ。 学校に居ると、頭の中がおかしくなる。 周りでぺちゃくちゃと喋る同級生達の声を、シャットアウトできない。 余計なことしか考えられなくなって、耳鳴りがする。 壊れる一歩手前まで追い詰められるほど、俺は学校が嫌いだったか。  
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