輪の外側

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  退屈な授業に苦痛な教室。 よく一日耐えられたもんだ。 帰りのHRが終わるなり、俺は逃げるように教室をあとにしようとした。 ところが、クラスメイトの女子一人に呼び止められる。 「待って!」 俺は待ちたくない。 もし聞こえないふりをしてそのまま帰って彼女を悲しませても、どうせ次学校に来る頃にはみんな忘れ去っている出来事だろう。 だけどもここで無視をするのも気分が悪い。 周りが気になるからじゃない。 俺がこれ以上自分の気を悪くしたくないから反応してやるだけだ。 本当につまらない、矮小な人間だと思う。 「何?」 自分でも驚くほど不機嫌そうな声が出た。 まあ実際不機嫌だから仕方ないか。 クラスメイトの名も知らない女子は少しだけ怯えたように息を飲む。 それから胸に抱いた教科書をおずおずと両手に持つと、細い指で頼りなくページをめくった。 「あのね、私、ここがよくわからなくて……今日先生に指された時凄くすらすら解いてたじゃない? 教えてほしいの」 よりによってどうして俺なんだろう。 俺なんかと接したっていい事はないはずだ。 今だって、教室の中にいるクラスメイト達の注目が集まっている。 冷やかすような目線。 俺と違って毎日健全に学校に通っているはずの彼女が、俺のせいで奇異の目にさらされていた。 「悪いけど、教えるのは得意じゃない。他の人に聞いて」 たったそれだけ冷たく言い放って、俺は逃げるように学校をあとにする。 いや、逃げた。 輪の内側から、外側の俺に向かって声をかけてくれた彼女から。 輪の内側から。 いったいいくつのものに背を向けて生きていけばいいんだろう。  
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