輪の外側

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  公園に居られないけれど、雨の日は嫌いじゃない。 下駄箱で靴を履き替えてから校舎を出る時に傘を開く。 この、誰とも目を合わせなくていい感じがなんだか心地良いんだ。 ザワつく雨音。 ぱちぱちと水滴が傘を叩く。 昨日あれだけ熱されたアスファルトが雨に冷やされて、だけども確かに存在する熱気でまとわりつく気だるさ。 まるですぐ隣に人が居てべったりと張りつかれているような錯覚すら覚える。 この感覚が無ければな。 でも夏だから仕方がない。 「ただいま……」 たとえ家の中に母が居たって絶対に聞こえない声量でそう言いながら玄関のドアを開けた。 別にいい。 居る筈がないんだから。 今日も俺のためにという理由を裏側に貼りつけて、母は知らない男のために笑顔を作るんだろう。 俺がすべてを母のせいにするように、母もまたすべてを俺のせいにしているんだと思う。 歪みきった毎日に慣れた俺もまた、歪んでいる。 強い雨に打たれて、傘など意味をなさなかった。 制服を濡らして滴るほどの雨水を含ませたまま、俺はそこにへたりこんだ。 この感情に名前を付けるとしたら、なんと呼べばいいんだろう? 虚無よりも色んな感情が渦巻いて、複雑というほどには豊かではない。 目を閉じたその裏側に、また青空が広がった気がした。  
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