輪の外側

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  化粧越しに青ざめた顔をして、母親の口調でそう答えた。 「大丈夫? お粥でも作る?」 応えるように俺の口から飛び出したのは偽善的な言葉。 『母親の求める息子』を演じているのかもしれない。 もはや俺は俺の意思で行動できているかすら、わからない。 すべての裏側に、母親の理想に合わせてやろうという意識の糸が引いているような気もするし、そうじゃない気もする。 「大丈夫よ。お店で軽くは食べてるから」 そう弱々しく笑い、意識的にか無意識かはわからないがやんわりと俺を払いのけた。 不要を通り越して邪魔みたいだ。 しかし母はこちらをちらりとだけ振り返ると、こう言って嬉しそうに笑う。 「ありがとう、気持ちだけ受け取るから。うつしちゃ悪いしね」 その言葉にまた吐き気がした。 母は純粋に俺にうつしたら悪いと思っているんじゃない気がしたから。 今、母親に寄生しているのは俺だ。 しかし将来、母は俺に寄生するつもりなのだ。 だから今は阻害しないでおく。 そのための行動に思えた。 母親の姿がすっかり気配も無くなった廊下に立ち尽くしていたことに気が付いて、はっとなる。 ああ、俺は母親すら穿った見方をして疑うことしかできないのか。 こんな妙な考えばかり回るのは、きっと学校になんか行ったせいだ。 あの息の詰まる空間に長居したからおかしくなったんだ。 俺はいつものように、責任を外に求めた。  
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