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「あっ」
聞き覚えのある声に振り返ると、一昨日ここで声をかけてきた少女だった。
先日と同様に、露出度の高い活動的な服装をしている。
ミニスカートから伸びた白い足で淀みなく交互に地面を蹴り、こちらに駆け寄ってきた。
「ミヤタ君」
にかっと笑うと、また当たり前のように俺の隣に座る。
昨日母から感じた酒と香水の匂いとは違う、別の匂い。
それに何となく安心を感じるのは何故だろう。
「……ミヤタ?」
「名前、聞いてなかったからさ。なんかミヤタっぽいから、ミヤタ君」
一昨日はろくに見なかった彼女を、一度は目が合った惰性のように眺めた。
真夏の公園に不釣り合いなくらい肌が白い。
女性らしく日焼け対策でもしてるんだろうか、大変なもんだな、と漠然と思った。
「じゃああんたはミケ」
「なにそれ、猫じゃん。それにどっちも頭文字がミってどうよ」
「勝手だしうるさいしまるで猫だ。ピッタリだと思うけどね、俺は」
仕返しに名前を付けてやると、彼女……ミケは不満げな顔をする。
しかしそれからぱっと表情を変えて俺に尋ねてきた。
このマイペースさは、やっぱり猫だ。
「ねぇ、空見てたよね。死にたくなるんじゃないの?」
俺の行動の矛盾をついて懲らしめたいとかそんなわけではないようで、純粋に疑問の色を滲ませていた。
会話の中で、あまりにも軽く扱われる命。
軽くしたのは他ならぬ俺自身。
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