左胸に抱く子猫

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  「ミケは、空を見てると生きる気力が沸いてくるんだっけ。なんで?」 ミケからの質問に答えずに、俺は質問を返した。 それに対してさして不満の色も見せずに、隣に腰かけた少女はあっけらかんと答える。 「死んだ人を思い出すから。その人があたしを見て笑っていてくれるように、ってね」 時が止まったような錯覚。 煮詰まった時間がそこに留まり、俺とミケの間に横たわったような一瞬。 思わず跳ねるように顔を上げてミケを見たが、やっぱりそいつは屈託なく太陽のような笑みを浮かべているだけで。 「誰、が?」 気が付いたら、デリカシーのない質問を重ねて浴びせかけていた。 ミケが思いだすという『死んだ人』。 空を見るたびに思いだすのであれば、その人が彼女の心の中を占める割合は消して小さくないだろう。 それに対して、俺は空を見て死にたいと繰り返してしまった。 こんなにもデリケートな話を聞いて良いんだろうかと、尋ねてから後悔する。 ミケは笑顔を少しだけ弱らせて、また顔を上に向けた。 髪が風に靡いて、白い首筋が木漏れ日に光る。 「お母さん。五年前にね、飛行機事故があったんだよ」 その言葉に、俺の中の沢山のものが音を立てて形を変えていったような気がした。 空を見て、父の姿を見て、死にたくなる俺と。 空を見て、母の姿を見て、生きたくなるミケ。  
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