左胸に抱く子猫

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  ぱっちりと開いた双眸が、俺を捕えて離さない。 息がかかりそうなほど近くで、それでもミケは動じる様子もなくこう告げた。 「死にたいってしょっちゅう言う人は、絶対に死なない」 俺はそれを、まるで知らない外国語を聞いた時みたいに、無感情に受け止める。 僅かに眉根をひそめたミケから発せられる、見透かすような言葉。 「生きたいから、死にたいって言うんだよ」 俺自身にすらよく分からないっていうのに、出会ったばかりの彼女に『俺』の何が分かるっていうんだろう。 だけど、やけに素直に聞いている自分がいた。 怒りも不満もなければ、喜びも感動もない。 ただ、言葉が俺を貫いて向こう側へと通り過ぎていく。 「ミヤタ君は生きたいんだろうね。でも、もう死んでるみたいな顔してる」 「死んでる? 俺が?」 その言葉だけは、俺に刺さったまま通り過ぎる事はなかった。 オウム返しに聞くと、ミケは頷いて応える。 「だから教えて欲しいの。ミヤタ君は生きたいんだと思う。でも、同時に生きたくない顔もしてる」 無垢な瞳は、最後まで俺から逸らされることはなかった。 預けていいんだろうか。 俺のこの、わけのわからない感情を。 自分ですら整理がつかない重たいものを。 今まで誰にも見せたことは無かった内側を、曝け出してみようか。 そんな気に、なれた。 同じような痛みを抱えてなお立ち上がったミケになら。 いつまでもうずくまった俺の弱さを。  
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