29人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
ぱっちりと開いた双眸が、俺を捕えて離さない。
息がかかりそうなほど近くで、それでもミケは動じる様子もなくこう告げた。
「死にたいってしょっちゅう言う人は、絶対に死なない」
俺はそれを、まるで知らない外国語を聞いた時みたいに、無感情に受け止める。
僅かに眉根をひそめたミケから発せられる、見透かすような言葉。
「生きたいから、死にたいって言うんだよ」
俺自身にすらよく分からないっていうのに、出会ったばかりの彼女に『俺』の何が分かるっていうんだろう。
だけど、やけに素直に聞いている自分がいた。
怒りも不満もなければ、喜びも感動もない。
ただ、言葉が俺を貫いて向こう側へと通り過ぎていく。
「ミヤタ君は生きたいんだろうね。でも、もう死んでるみたいな顔してる」
「死んでる? 俺が?」
その言葉だけは、俺に刺さったまま通り過ぎる事はなかった。
オウム返しに聞くと、ミケは頷いて応える。
「だから教えて欲しいの。ミヤタ君は生きたいんだと思う。でも、同時に生きたくない顔もしてる」
無垢な瞳は、最後まで俺から逸らされることはなかった。
預けていいんだろうか。
俺のこの、わけのわからない感情を。
自分ですら整理がつかない重たいものを。
今まで誰にも見せたことは無かった内側を、曝け出してみようか。
そんな気に、なれた。
同じような痛みを抱えてなお立ち上がったミケになら。
いつまでもうずくまった俺の弱さを。
最初のコメントを投稿しよう!