破れたページ

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  「ふーん、それなのに外で勉強するんだ。へんなの」 ところが彼女は分かる気もないといったような反応を返してきた。 確かに、空なんて見たくないなら屋内にいればいい。 だけどもそれも息が詰まる。 結局のところ、俺が落ち付ける居場所なんてなかった。 「ここなら、木があるからあんまり空が見えない」 「えぇ? そんな理由? あははっ」 覆いかぶさるように枝を伸ばした木をちらと見上げながらそう言うと、彼女はおかしそうに笑う。 こんなちっぽけな日陰でしか自分を保っていられない情けなさに、またため息が漏れた。 「変わってるね、君。そんなんで成績大丈夫なの?」 「あいにく五位以内から落ちたことはないよ」 だけど別に誇れることだとは思えない。 むしろそれしか取り柄がないんだから。 それに、なまじ勉強ができるせいで母を追い詰めていると感じていた。 俺の父親は、五年前の飛行機事故で死んだ。 自由なはずの空で起きたエンジントラブル。 誰も助けてくれない空の孤独。 それ以来母親は俺を一人で育てるのに必死だった。 バイトをしたい、というと決まってこう言う。 『お前は気にしないで、勉強を頑張りなさい。いい大学をでて、いい所に就職して、それからお母さんを楽させてちょうだい』 朝も昼も夜も働き続けて枯れ木のように萎えていく母を見て、いつしか俺は何も感じられなくなっていった。  
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