第一章 辟易する天使と魔法薬

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魔物や魔獣などの面妖な生物が数多く跋扈し、魔粒子という名の未知の粒子エネルギー体が、魔法という形で人々に繁栄をもたらした世界。大陸マルギアナ。 非常に広大且つ肥沃な土地ではあるものの、様々な理由から、その地域毎における気候の差はとても激しい。 例えば、火の国という名の異名でも知られている南西の国。イフリア帝国は、一日の日照時間が多く、また所々点在する砂漠から卓越風が内陸に向かって吹くため、年中暑い。 また内乱や紛争の絶えない北部地方は、日照時間が短く、土地そのものの高度もとても高いため、年中寒くて雪が降る。 そういった具合で、比較的過ごしやすい気候の地域などマルギアナではほとんど無きに等しい。 だが幸いなことに、セントクレアを含む中立地域はその時期毎に都合の良い季節風が吹くため、どの季節になっても割と快適に過ごせたりする。 ――――今は夏。草木が目一杯に緑の手を広げ、蝉が煩く合唱をする季節。 そんな季節になると、やっぱり耐性の無い者はその暑さに辟易して必ず愚痴を溢したりするものだが、アルトは暑さとはまた別の理由で辟易していた。
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