第一章 辟易する天使と魔法薬

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『おい。あいつだよ。あの黒髪の女みたいな顔した奴』 『ほんとかよ。全然強そうには見えないぜ。 何かの間違いじゃないのか』 『いいや。俺あの時生徒会室にいたんだけど、あいつ、あのマリアさんに正面から喧嘩売ってたんだぞ。 「魔獣は僕とセリナで倒すから、お前たちは引っ込んでろって」 まず間違えようがねぇだろ』 『あの【鋼の女王】にそんなこと言ったのか!? 可愛い顔をしてるくせに、あいつ中々やるなぁ』 (……全部聞こえてるよ。悪かったね。女みたいな顔で。 それに僕は彼女に交渉しただけで喧嘩なんて売ってないし、そこまでストレートな言い方もしていない。 事実無根もいいところだ) 自警団や教師と廊下ですれ違う度に聞こえてくる、内輪だけのひそひそ話。 集中する好奇と疑念の眼差し。 日が経つごとに次々と盛られていく真実。 そして、彼らの会話に必ず飛び出してくる、女性を形容した(コンプレックスを刺激する)言葉。 しかも本人に一切干渉せず、それらが二週間以上も続いているとなると、基本的には温厚なアルトでも色々と限界である。 いっそのこと、直接訊ねに来てもらったほうがまだマシかもしれない
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