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はぁ~と、ため息を吐く音が頭上から掛かる。
呆れているのだろうか。
それとも怒っているのかもしれない。
相方(パートナー)の無理な我侭を聞いて、恋文書きに三時間もつき合わされれば、誰だってうんざりするに決まっている。
ケイトはレイの名を弱々しく呼びながら、恐る恐る様子を伺おうとすると、
「えい」
ズビシ。
「いたっ!?」
頭にチョップを落とされた。
私を殴りたくなるほどレイ君は怒っていたの?
そう思いながら、ジンジンと痛む頭を手で押さえていると、
「確かに引っ込み思案で、男と喋るのが苦手なおまえにしてみれば、好きな男をデートに誘うのはハードルが高いかもしれねぇ。
でも前におまえがアルトに言ったこと、もう忘れたのか?
“そんな後ろ向きなことを言うアルト君は、私なんとなく見たくないって”。
まさかアイツに好かれたくて、そんなことを言ったんじゃないだろ?」
ケイトは頭から手を離してゆっくりと見上げる。
レイは怒っていなかった。
それどころか不機嫌そうにもしていなかった。
ただ真剣に、ケイトの鳶色の瞳を見つめていた。
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