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ガタッと椅子を鳴らして立ち上がると、レイはケイトの肩をバシバシと叩いて、
「ハハハ。冗談だよ冗談。
ケイトなら絶対に上手くいくよ。
――――あっ、これも返すわ」
手にしていた便箋をすっとケイトに手渡すと、そのまま彼女の衣裳部屋から出て行こうとする。
「あっ。待ってレイ君!」
ケイトは受け取った手紙を、机の脇に口を開いた状態で置いていた鞄に慌てて突っ込むと、後ろから彼に声をかけて、
「今日は、本当にありがとう。
私も、いつだってレイ君の味方だから。
だから……校内対抗戦、頑張ってね」
レイへの感謝の言葉を述べて、にっこりと笑う。
引き止められたレイは数秒の間、神隠しにあったかのようにぽかんとケイトの顔を見つめていたのだが、それから恥ずかしそうに背を向けると、
「……おう。任せとけ」
蚊の鳴くような小さな声で返事を返す。
「――――ただ、アイツは俺達に何かを隠しているんだよな。
それがケイトに影響しなければいいんだが……」
ただ部屋を出て行く際に彼が呟いた言葉は、彼自身のドアを閉める音に掻き消されて、ケイトの耳に入ることはなかった。
「……よしっ。レイ君も応援してくれているんだし、明日は頑張るぞ!」
そして、これが全ての始まりだということも、彼女には知る由も無かった。
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