小樽航空戦

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旗艦竜神を先頭に港を出ようとした時だ。 「こちら小樽伝令部。敵軍の航空隊を確認。注意されたし」 竜神の右横を小樽基地所属の第十六水上航空隊の一式水上戦闘機流水(リュウスイ)が水面を滑走し飛んでいった。水上戦闘機とは日本独自の戦闘機で、陸上に飛行場がない場所で、水の上から飛び立てる戦闘機である。因みに飛行場には着陸不可。 「こんな時に敵さん襲撃ですか」 「やはり待ち伏せだったか。米海軍の護衛空母が一昨日からからここら辺をうろうろしてるとは聞いてはいたが…」 「まぁ、やってやりましょうぜ」 流水のパイロット達の通信である。 直ぐに第二十七航空隊にも出撃命令が下った。この間にも敵は近づいている。一刻の猶予もない。 「敵機襲来!すぐに上がれ!」 言音達は格納庫の各々の戦闘機に飛び乗ると、直ぐに飛行甲板に上げられた。 排気管から力強く一気に黒煙を吹き出し、低い唸り声を上げてエンジン始動。プロペラが大きな風を起こす。 「此方竜神、離艦を許可する」 フルスロットル。尾脚が上がり主脚が飛行甲板から離れる。 青く晴れていた空もいつしか鉛色になっていた。
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