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瀬戸に羽鳥は唖然とした。瀬戸に関しては
「あ…あぁ?」
と奇声を上げた。
「どうした、瀬戸?」
黒田が尋ねると瀬戸は慌てて
「何を言ってるのですか司令!相手はロシア軍ですよ!?」
「知らん」
黒田は即答して言い切った。
「僕が日本軍?普通は捕虜収容所行きだろ?」
とレーナ。黒田は
「君の腕前を見た。収容所行きは勿体無い。それと、私の部下達が調べたところ、君に国に帰っても居場所は無さそうだ」
レーナは話の内容が読めなかった。
「何故?」
そうレーナは黒田に聞き返すと
「君は孤児だね」
「だから?」
「君は殺人で孤児になったね。
私はその犯人を知っている。それは…
君の上官で師団長イワン・ドエルスキー少将だよ」
レーナは驚いた。黒田は相変わらずのポーカーフェイスで
「ふふ、驚いたようだね。彼の兄は君の父の政敵でね。そして師団長は兄に頼まれて部下数名を率いて一家を皆殺しにした。しかし唯一外にいた君は生き残った」
レーナは言葉を無くしていた。
「最後に。師団長は君の命を常に狙っている」
黒田は目を閉じ、話し終えると、
「嘘を言うな!!」
レーナは叫んだ。
黒田は目を開き冷静にレーナの方を再度見て
「まぁ叫びたくなるし、嘘だと思いたいだろう。しかし、我々の『日本軍省情報部』が資料を見つけてきてね。これ、情報部からの君の師団長イワン・ドエルスキー少将の身辺調査書」
と黒田はテーブルに身辺調査書をに置くと、レーナは直ぐに飛び付き目を通した。そして動きがピタリと止まった。
「一体これをどうやって?」
レーナは声を震わせて言った。
「我が情報部が君のところの政府のお偉い様から師団の重臣まで調べ上げた」
と黒田。その間に言音がレーナの後ろへ回り、身辺調査書を見た。言音はハッとなり黒田に言った。
「殺されるの、レーナは?」
黒田は
「彼女が師団に入った当初から彼は気付いていたようだがね。彼女があまりに多くの戦果を挙げたおかげで今日まで生き延びれたといったところだ。今回が彼女にとって初めての被撃墜だ。彼は被撃墜の時に帰ってきたところを殺そうとしているようだ」
と話し終えると直ぐにレーナの方を向き、
「ロシアに帰って殺されるか、我々と共に行動するか。答えは二つに一つだ!答えよ!」
と一喝した。少々の沈黙の後、俯いていたレーナは頭を上げて言った。
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