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「やめろよ言音。そんな露出甚だしい姿でキスをねだるなよ…。それに、何処握って動かしてるんだよ…」
「んふ。良いじゃない、もしかするとこのキスが今生最後のキスになるかもよ。それとも硬くなってきたから私達一つになっちゃう?私ね、初めてなの。優しくしてね」
カーテンが掛かり薄暗い洋室のベッドの上、押し倒される男の子とその上の女の子。
只今キスをねだるほう、彼女は藤野言音。日本軍通しての最年少女性戦闘機パイロットである。階級は少尉。16歳。
「いい加減にしろ!僕はこういうのが苦手なくらいわかってるだろ?」
此方の彼は木村竜乗。此方は日本軍通しての最年少男性パイロットである。階級は少尉。16歳。
「もう」
言音はこう言った途端、竜乗にキスをした。竜乗は頬を赤らめて
「ッタク、これで良いだろ。ほら早く服を着ろ。そんな姿は見たくない」
「はいはい」
言音は名残惜しそうに言って軍服を着た。
二人はこの後大きな洋館を出た。洋館の主の言音は
「暫くはいなくなるからね」
と言うと竜乗の車に乗り込んだ。
言音の家は小樽の海が見える高台の一等地にある大きな家だ。建築年度は昭和初期と極めて古い。彼女の親はとうの昔に亡くなっており、彼女独りがこの家の住人だった。本人曰く、近年はまともに住んでないから別荘だ、と言っていた。
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