プロローグ

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少女は毒にやられても、己が犯している罪には気づかない。気づいた時にはもう、毒の虜。 誰も実体は知らずに、事態は広がってゆくのだ――――― **** 「最近パッとしねぇなー。なぁロイ」 雑風景な一室。ここは怪盗団のアジトである。 逆立てた赤褐色の髪の頭を掻きながら男は欠伸をした。 「パッとしないのは君自身じゃないのか、ジェーク」 その横でロイはメガネの汚れをハンカチで拭きながら、ジェークと呼んだ男を横目でチラリと見た。 ロイはロイウェルトの愛称で、仲間からはそういつも呼ばれている。 ジェークは良く言うじゃねぇのと、立ち上がり、ロイに喧嘩をふっかけるような素振りを見せる。 しかしこれはただ暇を持て余し、相手にして欲しいといった意思表示であった。 その二人の横を、一人綺麗な長い金髪を揺らし、めかした女性が通り過ぎる。 「もうバカなやり取りは止めて、二人とも外に出たらどうなの?」 じゃあねと、彼女は忙しそうに部屋を出て行った。その背中を二人は静かに見送り、同時にため息を吐いた。 「サラはまたエステかよ」 ちぇっと舌を鳴らしながらジェークは椅子の背に凭れた。
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