プロローグ《人形》

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俺はたまに思うことがある。 ― 時を歩んでいるのか、と。 自分の中の時間はあの時を境に一秒も動いていないのではないかと不安に駆られてしまう。  過去に自分独りだけ取り残されていると思い込んでしまう。 そんなのただの杞憂でしかないのに    そう考えられずにはいられないのだ。  俺は過去に捕らわれながら生きている。  体は変化したのに、心がその変化についていかない。  なぜなら、心は過去に忘れてきたから。   頭で考えることはできても、感情が生まれてくることはない。  生命活動こそしているが心が無いのだからそこら辺の人形と同じだ。  それなのに今でも過去の恐怖に怯えている。 矛盾している。 感情が無いというのに恐怖を感じるのは可笑しい。
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