ブロマイド

2/5
前へ
/55ページ
次へ
明らかに周囲の運動量は少なくなり、夜が深みを濃くしていく中、僅かなる沈黙が訪れた。 その色を薄めるかの様に藤木が話し出した。 「まぁ金山編集長にしたって、本の広告収入は無視出来ねえだろう。」 「あそこはカナリの御得意様だからなっ!」 沈黙の中でも夜の色を手離さないままの菱野が叫んだ。 「ジャーナリズムのカケラもネぇー‐‥」 「あいつは新聞折込チラシでも作ってろよ!!」 悪態は更に濃色になる。 「所詮、雑誌作ってんのも儲ける為―…」 「其れはドコの編集でも同じさっ! 折込でもなっ.. 」 部屋の右斜め上に視線を移していた藤木は、そう言いながら机の上にある菱野の煙草とZIPPOに手を伸ばしてカチッ・ジュッボッ..--..と火を点けた。 「でもオマエここに来て正解だよっ」 「俺と組めば新しいスーツ、好みの色で買えるゼっ!!」
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加