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母さん
―白雪の上に庭の椿がポトリ…と落ちた。
その様を艶然と微笑み、見つめる“少女”がいた。
いや、実際は私を産んでくれた人なのだから“少女”というのは誤りだ。
黒地に椿の花枝を象った冬着物をその身に纏い、白銀の庭園を微笑みをたたえ眺めている。
私はそんな彼女を見守っていた。時々、この人は本当に私の母なのか疑問に思う。
「母さん…もう中へ…これ以上ここに居ては風邪をひきます」
そう告げる私に彼女は必ず『大丈夫よ…』と微笑みながら言うのだ。囁くように、私の耳にだけ届くように。
だが、その日は違った。続きがあったのだ…
「大丈夫よ…それに、もうすぐ“お客様”がいらっしゃるわ」
私は心の中でチッ…舌打ちをした。
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