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『こっち来て見ろってば!!』
そう言って彼は僕のことを蹴飛ばすと、腕をつかんで無理やり立ち上がらせ、今まさに登ってきた坂を指差した。
そこには朝焼けに包まれた僕らの町が静かに広がっていた。
「…世界中に二人だけみたいだ」
思わず誰に言うでもなく口からこぼれた。
「なんてな。そんなわけ…『俺も今同じこと考えてた』
言った後で恥ずかしくなってきて誤魔化そうとした僕の言葉をさえぎるように彼はニカっと笑うと視線を町並みに戻した。
きれいな景色がそうさせたのか、同じことを思ってくれたからなのか。
気がつくと僕の目からは涙が流れていた。それを知られたくなくて、しばらく後を振り返ることができなかった。きっと、いつものように底抜けに明るい笑顔で笑っていてくれたのに。
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