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『切符買ってくる』 駅に着くと肩で息をしている僕を散々笑った後、あいつはなんでもないことのように券売機に向かった。 そして一番端にある、一番値段の高い切符のボタンを押した。 僕には想像もできない場所。そもそもその切符でどこまで行くのかすら知らない。 …ほんとに行っちまうんだな そんな思いをかき消すように彼とは対照的に一番安い入場券を買い、すぐに使うと分かっていながらもポケットにしっかりしまった。 『なんだ、お前ホームまで来るつもりなのか』 「いいだろ、別に。」 意外そうに言う彼にちょっとムッとしてぶっきらぼうに答える。 『いや、なんかお前って感じ』 そういってまた少し笑った彼につられて僕も少し笑った。 ふと腕時計を見ると電光掲示板を確認して改札を通ろうとした、瞬間彼の動きが一瞬止まった。 ふと見てみると彼の体には大きすぎる鞄の紐が引っかかって通れないようだ。 …この鞄、この間一緒に買いにいったやつだ。
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