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俺の頭は、先生のたった一言で、真っ白になった。
今まで覚えてきた数式も、オームの法則も、小学生で習ったてこの原理さえも、すっかり飛んで‥
山田先生の手を払って、再び、プリントの答案用紙に向き合った。
「‥先生は、それを俺に伝えることに、メリットがあるんですか。」
「え?」
「好きだとか、愛だとか、恋だとか、友情だとか、生きていく上で必要なんだか、俺にはよくわかりません。」
俺は尚も答案用紙を見つめたまま、話し続けた。
「だから、俺には先生の言葉に答えられません。」
静かだった。
風の音も、時計の音も、グラウンドの生徒の声も全く聞こえない。
ただ一つだけ、心臓の音だけが、俺の中で響く。
「‥メリットは、追々考えていけばいいと思う。」
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