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「き、綺麗な洗面所ですね」
私は羨ましそうに言った
すると彩香は笑って
「そお?面白いね、優子ちゃん」
と、口を手で隠しながら言った
「綺麗です!家ごとまるごと!羨ましいです…」
ポーッとしていると
後ろから人の足音が聞こえた。
振り返ると灰色のジャージを着た、ショートカットの女の子が立っていた。
彩香の兄弟か……
その子は私を指差して言った
「何………この子…」
小さな、まるで幼児なんじゃないか、と思えるくらいのか細い声を出した
「えっと、この子は藍山優子ちゃん!!今日からここに入る子だよ」
『入る』??
一体何に…?
彩香は私の肩を叩き言った
「このジャージの女の子は幸汰萌奈って言うの」
もえな……
さちた……?
幸汰……???
私は彩香と名字が違う事に気付いた。
「へえ、新入りさん…、はじめまして。」
と、萌奈はこちらに手を出した。
握手…?
私は「はじめまして」と、握手をした。
「ここは“天野原”って言って、捨てられた子供とかを預かる所…」
萌奈はこちらを見て、手を離さずに静かにいう
「簡単に言えば“施設”よ」
施設…
ここは施設だったのか
私は施設に来るような子になったのか
「だから玄関にあんなに靴があったんですね」
私も萌奈を見て言った
『そうよ』と萌奈がうなずいた。
彩香はにこっと微笑んでいた。
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