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カイは公園から歩いて10分ほどの自宅アパートに急いで戻り、姉に公園での出来事を話した。
「はぁはぁはぁ、ね、姉ちゃん、た、大変だぁ!!」
全力で走ってきたため、汗をかき、息遣いが荒い。
「な、何、どうしたの!?」
キッチンから出てきた姉は、廊下で立っている息の荒いカイの姿を見て、焦った表情をしている。
「はぁはぁ、ケ、ケッ、ケーラが……」
「ケーラがどうかしたの?」
「ケーラが変な奴に連れてかれたぁあ!!」
「ええぇ!?」
カイの叫びに姉は驚いたものの、1回深呼吸し、問い続ける。
「落ち着いてカイ!!変な奴ってどんな感じだった?」
「う、うん、なんか目が細い男で、ツンツンな髪で……とにかく雰囲気が怖かった」
カイは状況を思い出し、少し手を震わせながら話を続ける。
「あっ、後ね、男は空を飛べるよ!!」
「空……空を飛べるってことは能力者の仕業ね」
姉は携帯電話をポケットから取り出した。
「警察に連絡しましょ!」
「ち、ちょっと!!俺がケーラを助けに行くよ!」
カイは慌てて姉の手から携帯を取った。
「はぁ?何馬鹿なこと言ってんの?相手は能力者なのよ」
「俺だって父ちゃん譲りの能力がある!!」
カイは姉に負けじと食い下がる。
「あんたの能力は予知能力じゃない!1人で数秒先の未来予知するだけで、空飛ぶ奴を見つけられる?てかあんたそいつに勝てんの?喧嘩すらもほとんど経験ないくせに……その傷見るかぎりじゃ、次は殺されるわよ」
姉は声を荒げ、弟の無謀とも思える行動を止めようと必死だった。
「うっ……」
カイはうつむきながら黙り込んでしまった。
父母が死んでから、姉が働きに出ている間、ケーラの面倒をずっと見ていた。カイの妹に対する愛情は深い。
確かに……今のままじゃ見つけるのも無理そうだ……
渋々だが、姉の意見に従うことにした。
姉はカイの気持ちにもある程度気付いていたが、弟まで危険な目にあわせるわけにはいかないと冷静に考え、携帯のボタンを押した。
「もしもし警察ですか?あのですね……」
それから1ヶ月経っても、警察からのいい知らせはなく、代わりに悪い知らせが入ってきていた。
ある警察官のグループから男を見つけたとの情報が入ったが、向かった先には誰もおらず、そのグループ全員が行方不明になっているとのことだ。
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