第二章 独白

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六月五日。 喜右衛門さんが捕縛され、宮部さんと先生が話し合いをされました。 そのとき、俺は彼女に茶を運んでくれるよう頼みました。 なかなか帰ってこないので、こっそり部屋に向かいました。 すると、彼女と先生は二人で部屋で話していたようです。 会話を盗み聞きするのは憚られた為、すぐに部屋から離れました。 だからどのような会話がされたのかは存じませんが、彼女が声を荒げたのは判りました。 やがて彼女は浮かない顔で、先生はいつもと変わらぬ様子で部屋から出てきました。 先生はいつもと変わりませんでしたが、雰囲気と言いましょうか。 言葉ではないもので俺に告げました。 彼女とはもう会えない、最後なのだと。 自分たちから彼女を引き離すのだと。
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