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だから俺はこのとき初めて、彼女の名を呼びました。
彼女は照れ臭そうにしており、恐らく解っていなかったのでしょう。
あれは、俺なりの別れの挨拶だったのです。
でも解っていなかったことが何よりの救いでした。
湿っぽい別れなど、彼女に似合いませんからね。
二人が出ていった後、俺は部屋に残された茶を片付けに向かいました。
殆ど飲まれておらず、其れ程緊迫とした会話が為されていたことが判ります。
先生の表情は変わりませんでしたが、心中は決して平常ではなかったことだと思います。
彼女との決別を先生が望んでいないことは、先生御自身だけでなく俺もよく解りますから。
そうこうしているうちに、先生が戻ってこられました。
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