第二章 独白

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だから俺はこのとき初めて、彼女の名を呼びました。 彼女は照れ臭そうにしており、恐らく解っていなかったのでしょう。 あれは、俺なりの別れの挨拶だったのです。 でも解っていなかったことが何よりの救いでした。 湿っぽい別れなど、彼女に似合いませんからね。 二人が出ていった後、俺は部屋に残された茶を片付けに向かいました。 殆ど飲まれておらず、其れ程緊迫とした会話が為されていたことが判ります。 先生の表情は変わりませんでしたが、心中は決して平常ではなかったことだと思います。 彼女との決別を先生が望んでいないことは、先生御自身だけでなく俺もよく解りますから。 そうこうしているうちに、先生が戻ってこられました。
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