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先生は一人にしてくれ、と仰いました。
部屋の外からでも先生の御様子は窺えました。
しかし、敢えて記さないでおきます。
其れが、恐れ多くも俺が先生にして差し上げられる情けです。
だから先生のこの御言葉だけ記しておきます。
“僕は彼女を騙し討ちのようなやり方で帰してしまったよ。きっと怒ってるだろうね。”
やがて先生は俺に命じました。
桂先生に文を届けるように、と。
喜右衛門さん、いいえ、古高さんが捕まったという状況の中、先生の御側から離れるのは嫌でした。
彼女が嘘をついていないならば尚更のことです。
彼女が真実を先生に伝えたならば、離れることは俺自身不安で仕方ありませんでした。
しかし、先生の命令に従わぬ小姓が何処に居りましょうか。
俺は文を受け取り、桂先生の元に向かいました。
向かう途中、壬生浪とすれ違いました。
壬生浪と言っても、ただの浪士ではありません。
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