第二章 独白

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先生は一人にしてくれ、と仰いました。 部屋の外からでも先生の御様子は窺えました。 しかし、敢えて記さないでおきます。 其れが、恐れ多くも俺が先生にして差し上げられる情けです。 だから先生のこの御言葉だけ記しておきます。 “僕は彼女を騙し討ちのようなやり方で帰してしまったよ。きっと怒ってるだろうね。” やがて先生は俺に命じました。 桂先生に文を届けるように、と。 喜右衛門さん、いいえ、古高さんが捕まったという状況の中、先生の御側から離れるのは嫌でした。 彼女が嘘をついていないならば尚更のことです。 彼女が真実を先生に伝えたならば、離れることは俺自身不安で仕方ありませんでした。 しかし、先生の命令に従わぬ小姓が何処に居りましょうか。 俺は文を受け取り、桂先生の元に向かいました。 向かう途中、壬生浪とすれ違いました。 壬生浪と言っても、ただの浪士ではありません。
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